ロベルト、フィルポ#9

1914年~7年ぐらいがフィルポの絶頂期であったと推察される。一時は楽団ひとつでは需要に応じきれず
第2、 第3楽団を作り、マエストロが掛け持ちで、演奏場を駆け巡ったというエピソードも、あるくらいの
異常人気であった。

名実ともに大成功者となった彼も、やがて転機に立つ時がくる。よくいわれるように、20年代から30年代に
かけては、歌唱タンゴの全盛期であった。作曲傾向はもちろん、楽団演奏の形態もリズムの本位だった
昔日の面影はなくなっていた。前にもいったように、ロベルト、フィルポの音楽感覚はひじょうに古風であり
とても時流についてゆけなかった。楽団は番頭まかせ(たとえばペドロ、マフィアのような人)にして
エストロ自身は隠居同然に、なってしまったのではないかと想像する。

ことに、電気録音初期のレコードを聴くかぎりでは、フィルポの音楽個性はほとんど感じられない。
(演奏自体はたいへんすばらしいが。)


この、ロベルト、フイルポ#1~#9までは、大岩祥浩氏の解説を、そのまま原文を壊さずに、記しました。
次に、ロベルト、フイルポ四重奏団に付いて、記します。