フランシスコ、カナロの生涯 その3

当時、タンゴは、まだ場末のごく限られた人々の間でしか支持されていませんでした。
演奏家とは、名のみで、みな、乞食同然のひどい生活をおくっており、ただ、
音楽が好きと云うだけで、好んでこうした世界に、飛び込んで来た、ボヘミアン気質の
人達だったのです。

居酒屋などにたまって、タンゴを聴き踊る客達も、誠にあやしげな連中でした。
このような場所では、夜な夜な物騒な刃傷沙汰が絶えず、官憲の
取締りのため、演奏中止を申し渡される事も、たびたびでした。

カナロが、初めて参加した、ドゥクロスのトリオは、主に、田舎廻りをする楽隊でした。
2年程でここを辞め、いよいよ、タンゴのメッカで有る、ラ、ボカに姿を現し
すでに、この辺りでは、売れっ子の、バンドネオン弾きの、ヴィセンテ、ロドゥカ
ギター弾きの、サムエル、カストリオータの二人と、手を組みました。
1908年の事であります。


このアルバムから、たまには、ヴァルス(ワルツ)は如何でしょうか…


演奏者 FRANCISCO CANARO フランシスコ、カナロ

曲目  VIBRACIONES DEL ALMA 心のときめき

読み  ビブラシオネス、デル、アルマ

録音 1956年

この曲は、ヴァルスとしては、カナロの処女作で、1911年、ビセンテグレコなどと共に、
カフェ「エル、エストリーボ」に、出演中に作曲したものです。カナロのヴァルスと
云えば、「コラソン、デ、オロ」が有名で、良く演奏されますが、この曲は、
全くというほど、演奏されないのは寂しい限りです。同じようなタイトルで
「心の底から」という、同じ年に作られたヴァルスは、チコス、デ、パンパの、レパートリーに
なっています。この曲も是非、取り上げて欲しいものです。

1930年~40年代のカナロ楽団 一番左がカナロ、右にトランペット奏者がいます。