タンゴの生い立ち その7

ドイツで、発明された楽器バンドネオンは、ごく僅かですが、アルゼンチンに輸入され、
アコーデオンの代わりに、これを演奏する人が出てきました。1900年代に入ってから
この楽器は、タンゴに使われるようになります。

初期のタンゴでは、フルート、ビオリンがメロディー楽器であり、そのため、音楽自体も
明朗で楽天的なものでした。しかし、バンドネオンが加わった事により、
タンゴは、更に重々しい陰影を加えてきました。

ものさびた悲しげな声と、重くひきずるような足どりをもった楽器、バンドネオンは、
それまで陽気一点張りだったタンゴに、更に深みをつけ加えました。

タンゴの作品の内容も、目に見えぬ変化をしていきます。それは、ダンスの伴奏にすぎなかった
タンゴが、「聴く」にも適したものへの歩みであり、ブエノスアイレスの大衆が
「自分たちの音楽」が、形成されてゆく事でもありました。

1910年代になると、もうタンゴは、他の音楽とは、異なる性格をもち、ブエノスアイレス
庶民感情を表現する音楽になっていました。
タンゴには、発明者や、創始者もいません。
無名の学士たちの、陰に隠れた努力が、いつの間にか一つの町を代表する音楽を生んでいたのです。

このアルバムから、歌のタンゴをお聴き下さい。

歌唱者  ROSITA QUIROGA ロシータ、キロガ

曲目   LA MUSA MISTONGA

読み   ラ、ムサ、ミストンガ

録音   1926年

タンゴ発祥地、ラ、ボーカ生まれ、少女時代から、ボカ界隈で、流しをしていたそうです。
やがて、スカウトされ、劇場出演したのが、きっかけで、とんとん拍子の出世を
しました。彼女の歌は、地味なようでいて、内に激しい感情が、みちあふれているという
タイプのタンゴには、うってつけの唱法です。歌うと云うよりは、むしろ、語るという
方が、適当かと思います。尚、この曲の録音は、アルゼンチンビクター初の、
電気録音です。



このタンゴは、「みんふぉと」が、10/31でサービス停止との事で、再生不可です。